医療従事者は、主に患者さんを相手に仕事をします。
検査室にいて患者さんとあまり関わらないイメージの臨床検査技師ですが、生理検査や採血では、実際に患者さんと向かい合って対応することが求められます。
最初は緊張しますよね。私も慣れないうちはガチガチでした。
臨床検査技師なら、患者さんに検査のことを説明することがあると思います。
そのときに気をつけなければいけないことって何でしょう?
そもそも、なぜ検査の説明がいるのでしょうか?
その説明は、患者さんにとっては「はいはい、わかってるよ」と思うことかもしれませんが、それでも私たちは説明をしなければいけません。
それは、検査が正確におこなわれる必要があるからです。
では、検査が正確におこなわれるために、患者さんにどのように説明をすればいいのでしょうか。
私は、ある経験を通して、患者さんに説明するときにある一つのことに気をつけています。
その経験とは、私が患者として病院に行ったときに起こったできごとでした。
大学病院で親知らずを抜いたときに起こったできごと
学生のとき、大学病院に入院をして親知らずを2本抜歯することになりました。
親知らずの生え方が特殊だったので、普通の歯医者さんでは抜けなかったのです。2本抜くなら入院したほうがいいと言われ、紹介状を書いてもらいました。
大学病院で問診をしてもらい、抜歯の予約しました。
抜歯当日に説明を受けた後、入院する部屋に案内され、そこで抜歯の時間まで待機。
しばらくすると、向かいのベッドに、中学生か高校生くらいの女の子とお母さんが入ってきました。
その子も、私と同じように親知らずの抜歯で来ていたようです。
女の子のお母さんが部屋を出ていきました。
数分後、戻ってきたお母さんが、
「ちょっと!あんたなんでパン食べてんの!?」
「歯を抜く前に食べちゃいかんって説明受けたやろ!?」
と、大きな声で叫ぶのが聞こえました。
女の子は、
「だって…お腹がすいて…ちょっとなら食べてもいいと思ったんだもん…」
と泣きそうな声で言いました。
その後、お母さんは看護師さんを呼んで事情を話していました。
結局、すぐに抜歯はできないということで、二人は部屋から出ていかなければなりませんでした。
悪いのは患者さん?説明した職員にも責任がある?
このできごとをカーテン越しで聞いていた私は、
「これは、女の子だけが悪いんだろうか」
「職員さんはどう説明したのだろうか」
といろんなことを考えました。
そういえば、私が受けた説明も、
「抜歯までは何も食べないでください」
という内容だったような…。
そもそも、なぜ抜歯前に食べてはいけないのかというと、抜歯をしたときにオエッとなり吐いてしまうのを防ぐためです。
私はなんとなくその理由がわかっていましたが、あの女の子はわからなかったんじゃないのかなと思いました。
職員さんが女の子にどう説明したのかはわかりません。
しかし、もし職員さんが、
「抜歯のときに嘔吐するおそれがあるので、食べないでください」
と説明していたら、女の子は食べなかったかもしれないと思わずにはいられませんでした。
患者さんに説明するときは【理由】も一緒に!
この体験を通して、私は医療従事者として患者さんに何かを説明するときに、できる限り理由を一緒に伝えるようにしています。
例えば、採血の後に、針で指した部分を患者さんに押さえてもらうように説明をするとき。
ただ、
「押さえておいてください」
と言うよりも、
「まだ血が出るおそれがあるので、押さえておいてください」
と言ったほうが、患者さんにより伝わると思うのです。
確かに忙しいときだと、ついつい省略して伝えてしまいがちです。
しかし、検査が正確にできなかった、患者さんにつらい思いをさせてしまった…そうなってしまうほうが、めんどうなことになりますよね。
たった一言理由を付け加えるだけで、患者さんに伝わるのだとしたら、これほど効果的なものはないと思っています。
まとめ
検査を正確におこなうために、患者さんに説明するときは【理由】も一緒に伝えるべし!